オプション解説

ピストン製作時に用途、目的に応じてオプションの加工を追加することが可能です。
以下、名称はCP社のものとなります。他社でも同等のオプションが用意されています。

コンタクトリダクショングルーブ
トップランドに複数の溝を刻むことで、主に対焼き付き性を向上させます。
スカッフ(微小な焼き付き)を溝で止める事で、焼き付きにまで悪化する事を
防ぎます。アンチデトネーショングルーブス、スカッフセレーション、ラビリンス加工とも呼ばれます。
アキュムレーターグルーブ
セカンドランドにV字溝を掘り、トップリングとセカンドリングのガス容積を増やし、
トップリングのフラッタリングを防止、ガスシール性能を向上させます。
ブローバイの低減や、オイル消費の低減も望めます。
以上の二点はハードチューニング用は勿論、ストリート用としてもトラブル防止、性能向上の狙いから採用をお勧めしています。
ピストンピンオフセット
純正ピストンでは採用されることが多いピストンピンオフセットを設定します。
アイドリング~低回転でのスラップ音(ピストン打音)を低減させたり、ピストン挙動をコントロールすることで、ピストンリングの働きを補助する作用があります。ピストンごとに連桿比、重心位置等が異なる為、最適なオフセット量を割り出すことは難しいですがボアの1%~1.5%程度が目安となります。
スカートコーティング
moly dly firm coatingモリブデン系のコーティングでフリクション低減、馴染性の向上等の効果があります。
後加工でコーティングを行うより安価に追加できます。WPCを行わない場合に
お勧めです。高耐久な国内施工のコーティングも施工可能です。
Xタイプ鍛造型
X type forgings主に4バルブ、NA用ハイコンプピストン向けに専用設計された鍛造型を使用します。
鍛造型の段階で徹底的に肉抜きされているので非常に軽量に仕上げることが可能です。ピンボス間の距離が短く、短いピストンピンを使用できるのでASSY重量が軽くなります。
そのかわり、適用が限られるので採用の可否の確認が必要です。
2バルブエンジンの場合、追加で軽量加工を行う事で大きく重量を削減できます。
薄型ピストンリング
NA向けの薄型ピストンリングです。1.0mm、1.2mm、2.0mmのCPN2、
1.0mm、1.0mm、2.0mmのCPNG2が一部サイズですが用意されています。
張力も標準の物より抑えられており、フリクション低減に効果的です。
標準のリングは1.0mm、1.2mm、2.8mmです。
サポートレール
オイルリング溝に使用することで、溝をピン穴にオーバーラップさせる事が可能となります。
ピストンのコンプレッションハイトの短縮時やバルブリセスを増した際の寸法調整に使用します。
ハードアルマイト
hard anodizeピストン全体や、冠面~トップリング溝まで等、様々な範囲で対応可能です。
高過給時の溶損防止や、リング溝の耐磨耗性、耐スカッフ性の向上が期待出来ます。
KRAMM-LOX Sure lox
一般的なサークリップに変わる新たなクリップです。クリップの回転を防ぎトラブルを防止するのが主な効果ですが、専用工具を用いて組み付けや分解を短時間で確実に行うことが出来ます。エンジン屋なら大喜び間違いなし。
詳細はこちらをご覧下さい。
裏面軽量加工
underhead milling冠部裏側を機械加工で軽量化します。冠面形状に合わせて設計、加工するので型の形状によらず、なるべく軽く仕上げることが可能です。初回製作時に設計料が必要です。究極のピストンをお望みの方に。
DLCピストンピン
DLC加工済みのピストンピンを選択可能です。フリクション低減に効果があります。
ラインナップが限られますので、確認が必要です。
特急製作
特別にお急ぎの場合に、追加代金を支払うことで通常より早く製作することが可能です。
その他
冠面形状に関するもの、ピンボタン等、他にも追加可能なオプションがあります。
必要に応じてご案内しております。詳細はピストンメーカーのカタログをご覧頂くか
お問い合わせ下さい。

CP社のオプション一覧(カタログより)

 

よくある質問

製作例(コンプレッションハイト短縮、圧縮比アップ)

ピストンリングの特注は可能ですか?
ピストンリングの特注も可能ではあるのですが、費用、信頼性の問題がありますので、通常はピストンメーカーで用意しているサイズより選択して採用します。サイズが無い場合や希望に応じてピストンリングメーカーの既製品より選択するケースや、純正品を使用する場合もあります。多くのサイズで0.5mm刻みでラインナップがあります。

製作可能なボアは?
ピストンリングのラインナップは0.5mm刻みですが、ピストン本体の直径は自由に設定可能です。
リングは合口隙間を調整することで多少大き目のサイズを使用することが出来ます。
いくつまでボアアップ出来るか?といったデータはありませんので、ボアアップの実績の確認、
ボアの指定はお客様にてお願いします。

鋳造での製作は?
すべて鍛造型をベースに、機械加工で仕上げた製品となります。鋳造品での少量製作は行っておりません(400気筒分から製作可能)。似たような組成の合金でも一般に鍛造の方が組織が密になり、強度が向上します。巣の発生もありませんので製品の強度も高まります。

材質は?
CP社、JE社(一部除く)は高温強度に優れるAA2618、Wiseco社は低熱膨張のAA4032、一部AA2618となります。

ピストンピンの特注は?
既製品よりの選択となります。CPではミリサイズのみのラインナップとなります。
他メーカー製品との組み合わせや、純正ピンに合せての製作は可能です。
ピストンピンのみ国内で製作することも可能ですが、別途費用が必要となります。

特殊シリンダーへの対応は?
CP社の日本車向けピストンリングはニカジルメッキ等の特殊材質にも対応しています。
ボーリングが不可能な場合、クリアランスの設定、ピストン径の指定が難しいので
詳細な打ち合わせが必要となります。

ピンハイトの制限は?
ピン上寸法、コンプレッションハイト等と呼ばれる、ピストンピン中心よりピストン上面肩部までの寸法の事です。
市販エンジンの場合、ランド寸法、リング寸法、ピン径/2の合計以上の制約がありますが、オイルリングにサポートレールやピンボタンを採用することでさらに短縮する事が可能です。

勝手違いへの対応は?
ターンフローエンジン、V型エンジン等で、バルブ配置やピンオフセットの勝手違いが有る場合にもそれぞれに専用製作で対応可能です。最小で2種類x各2気筒分、計4気筒分からの対応となります。

2スト向けの特注は出来ますか?
対応出来る鍛造型が有れば製作出来ます。最小数量がCPとJEは4気筒から、Wisecoは12気筒からとなります。2ストはWisecoが最も鍛造型が充実しているようです。

ディーゼル用のピストンは製作できますか?
対応出来る鍛造型が有れば製作出来ますが、ガソリン用とは主要寸法が大きく異なりますので現状ではほぼ不可能となります。

数量割引はありますか?
3台分以上(12気筒以上)から数量割引が適用されます。12気筒分の場合で5%程度の割引となりますが、一台分製作し、実機でテストしてからの量産をお勧めします